Scatter Points(散点)

Yuki Onodera « Scatter Points » No.1




Yuki Onodera « Scatter Points » No.7


Yuki Onodera « Scatter Points » No.4


Yuki Onodera
« Scatter Points » No.2



Yuki Onodera « Scatter Points » No.3



Yuki Onodera  « Scatter Points » No.9


Yuki Onodera  « Scatter Points » No.11

Yuki Onodera  « Scatter Points » No.12

「散点」というタイトルは、今回の私の写真行為と写真への態度を表している。
まず、カメラは遠近法に縛られている。そしてファインダーで見える風景を切り取らなければならない。私はこの「切り取る行為」をできる限り避けたかった。それで1枚撮ると視点や立ち位置をずらしてまた一枚、またずらして1枚──というふうに、自分の身体の位置と視線が散点的になっていった。また、ある場所にいながら、ずらして撮影した数だけの時間をも内包することになった。中国絵画の散点透視法に通じるものとも言えるかもしれない。作品が遠近法的な風景から解放されているのがわかると思う。
そのような理由で、このシリーズでは一つの作品が複数の写真から構成されている。1枚の写真のごく一部をトリミングで拡大した作品もあれば、1枚の写真を銀塩技術のコンタクトプリントで印画紙に転写し、ポジとネガの画像を共に構成して作品化したものもある。
またこのシリーズは、銀塩写真とはいえ通常のプリントとは異なり、暗室作業での様々な技術を取り入れ、私自身でプリントしている。暗室内で意図的に作られた光と影、フォトグラム、印画紙に直接懐中電灯で光を当てて感光させること──普通ならやらない、タブーなことさえどんどん取り入れ作品化している。それらの暗室での行為は、散点化して捉えた光景にさらに上書きするような行為だ。結果的に、リアルな現実の断片にノイズを与えるような効果を生み出す。
こうした暗室での実験的な取り組みに加えて、仕上がったプリントをキャンバスにコラージュすることで、さらに物質化が加えられる。散点的に捉えた複数枚の写真をキャンバス上に再構成することで、そこには複数の時間が内包され、視覚的に撹拌された空間も現れてくる。
さらにコラージュ作業では、作品によって、写真プリントのみならず古着や古い雑誌のページなども写真プリントの表面上にコラージュされる。そうなると、ここでは写真はただの画像やイメージで終わらず、そこに実在する物そのものと合体する。古着はかつて誰かが着ていた衣服であり、何かしらの過去の痕跡を残している。百年前に出版された古い雑誌の各ページには、その当時の世界の見方が情報として印刷されている。時間の経過を宿した黄ばんだ紙は、その物質感を主張する。
イメージとしての写真に銀塩技術やコラージュを施し、物質としての存在を見せることで、私は写真本来の働き──つまり写真に写されているものを読み取るという行為から自由になれると考えている。
さて、このシリーズではコラージュ作業の最中にキャンバスにアクリル絵の具をペイントしたり、写真に貼り付ける古着に絵の具をかけたりしているが、私は写真の上に自由にペインティングするつもりは全くない。あくまでも銀塩の技術を元にして、写真面に何か不在を作ったり、何かを付け加えたりするだけだ。
私は写真というのはとても不自由なメディウムだと思う。撮影から始まって、カメラの制限、フィルム現像の制限、プリント作業の制限──自由自在に創作できない状況が常に付きまとう。しかし私には、その制限やルールがあることが逆に面白い。そんな制約があるからこそ、そのリミットを壊すことで写真の本来性が見えてくるのではないかと思う。
そして偶然性。この偶然性は重要だ。偶然を作り出したり、コントロールしたりするのは不可能だが、意図したものが仕上がる過程に揺らぎを起こすような状況を作ることで、偶然や事故が起こりやすくなる。そしてその揺らぎの中で生まれたものを、どこまで自分のものとして取り入れるかは、まずは直感、そして段々と構築されてゆく。
画家は白い紙やキャンバスに対峙し、脳裏や心象、そして自身の身体性などを白紙の上に置き換えてゆく。写真の場合は、ある時ある場所で現実に起きた光景を捉える。逆に言えば、私たちはカメラが偶然にも取り込んでしまったものからは逃れられない。いずれにしてもそれは現実から切り取った断片であり、薄い膜のようなもの。そしてその光景は二度とは繰り返されない偶然の仕業によるもの。私はこれこそが写真というメディウムの面白さだと考えている。
このシリーズでは、そうした意味で既存の写真の枠組みを大きく飛び越え、奇異な方法も含めて自由に写真性を追求したいと思っている。

オノデラユキ 2026/09/20

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Paris