Yuki Onodera
雑誌『写真』 vol.3「スペル/SPELL」
これまで明確なコンセプトに基づいてそれを写真作品にするというスタイルを取ってきたオノデラユキにとって、ある意味でなりゆきに任せた制作というのは挑戦ではなかっただろうか。だが、棒切れを一本ずつ接着して偶然的な要素を多分に取り入れた造形物を作っていく過程を写した<双子の鳥>は、鑑賞者の文化的背景がものの見方を支配していることを明らかにしている。オノデラ自身も同様の見解を示しているが、漢字を理解する人ならば、一枚目の写真は「体」という文字を想起させる。これは表意文字である漢字文化圏に特有で、おそらく、アルファベット文化圏にはない思考回路ではないだろうか。
他方で、<月の裏側>は、鑑賞者の文化的背景によらず、より普遍的にイメージを目にしたときに、ほとんど自動的に眼と脳の関係で処理され理解される情報の回路を断ち切る試みであると解釈することができるだろう。三点の写真は、それぞれ真ん中部分が正方形に切り取られ、他の写真と入れ替えられている。本シリーズは2020年9月から10月に東京のYumiko Chiba Associatesで開催された個展<TO Where>にも出品されていた。だが、同展にはほかにも<Muybridge’s Twist>などのコラージュ作品も多数出品されており、そちらの文脈で解釈したくなる構成となっていた。
他方、<双子の鳥>と対になることによって、それとは異なった、先述のようなイメージを理解するわたしたちの思考回路の問題として読み解くことが可能になるだろう。ここからも、イマジネーションとことばの関係が、写真鑑賞とことばの問題と切っても切り離せない関係にあることを明示していると言い得るのである。「スペル イメージの支持体としてのことば ー 現代写真における写真とことばのある断面図」
打林俊 Uchibayashi Shun より抜粋
最新号
Sha Shin Magazine vol.3 SPELL
雑誌『写真』 vol.3「スペル/SPELL」
川田喜久治 Kikuji Kawada
宇田川直寛 Naohiro Utagawa
オノデラユキ Yuki Onodera
草野庸子 Yoko Kusano
熊谷聖司 Seiji Kumagai
白石ちえこ Chieko Shiraishi
吉増剛造 Gozo Yoshimasu
仕様:A5判変形
定価:2,700円(税別)
発行:ふげん社
制作:合同会社PCT
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雑誌『写真』vol.3スペル 刊行記念展
宇田川直寛/オノデラユキ/草野庸子/熊谷聖司/白石ちえこ/吉増剛造
2023年1月24日(火)~2月19日(日)
火~金 12:00~19:00
土・日 12:00~18:00
休廊:月曜日
会場:コミュニケーションギャラリーふげん社
〒153-0064 東京都目黒区下目黒5-3-12
TEL:03-6264-3665 MAIL:info@fugensha.jp
Design & developpement: ABC Japon