ユミコチバアソシエイツ, 東京


2020/9/8-10/10

“TO Where”

写真家としてのオノデラの制作と思考は、一貫して、世界の模倣、写し、記録装置としての写真のありかたに揺さぶりをかけるような、〈写真の存在論〉〈カメラの存在論〉とも形容できる、独自の探究に捧げられてきました。オノデラの制作を振り返れば、カメラの機構、プリント、撮影行為のすべてにおいて、なんらかの造形行為、演出が重視されていることがわかります。この点においてオノデラは、記録装置としての写真から距離を取り、写真とカメラを、造形的なものとして捉え直していると言えるでしょう。印象派の時代、現実の克明な記録を可能にするカメラ装置の出現が、絵画の新たな造形的展開を推し進めた歴史を逆なでするように、オノデラは、カメラと写真というテクノロジーに潜在する造形的な可能性こそを拡張しようとするのです。
 新作個展となる本展は、コラージュ、ペインティング、、ドリッピングといった行為によって、何らかの操作がなされた写真で構成されます。銀塩写真プリントも、すべてオノデラ自身によるものです。これらのシリーズは、『Darkside of the Moon』と名付けられました。たしかに存在することは知っていても、その場所からは見えない「月の裏側」。写真というメディアの探究において、認識と知覚のあわいを往還するオノデラの新作をぜひご高覧ください。


Yumiko Chiba Associatesの個展『TO Where』は、同時開催となるザ・ギンザの「THE GINZA SPACE」によるリバイバル展『FROM Where – 古着のポートレート』の四半世紀後を明らかにすべく企画された。 viewing room shinjuku (YCA)の高密度な空間でその後の進化と分化の開花、そのキュッと詰まったエキスのようなものを鑑賞していただければと思う。それらは多様な作品群の先鋭化された断片とも言えるが、逆に少ない数であることによってクリエイティヴィティーの流れが俯瞰できるのではないだろうか。現在制作中の新作を中心に、大作マイブリッジ・ツイスト未発表作、さらに多様な被写体とテーマの作品をちりばめた空間は濃密/高密度な展示となるに違いない。

『古着のポートレート』発表の1995年から四半世紀、私の作品は有機的に多様に進化してきた。そしてその間、写真を取り巻く環境は大きく変容した。「写真」という言葉はいったい、いつまで使用できるのだろう?これが我々の置かれた現在の状況である。当初から私の疑問の中心は「写真」それ自身の存在とその認識、それ自体にあった。写真で何ができるのか、写真で何が試されて来たのか、などの問いを自問しながら二次元イメージに過ぎない写真を物質化させようと実験を重ねてきた。被写体もテーマもまちまちなそれらの作品群は一見唐突にも見えるだろうが、私の立ち位置から見れば各作品どうしが強く結びつけられているのである。

YCAではそれらのシリーズから、今後大きな分水嶺となるかもしれないコラージュ作品を中心に、「写真自体」をテーマにした実験性際立つ3シリーズ、そして新作『Darkside of the Moon』を展示する。
全て私自身の手による銀塩写真プリント、コラージュ、ペインティング、フォトグラム、ドリッピングで作り上げられている。手仕事の技術としてはとりわけ珍しいものではないが、注意して見て頂きたいのはどれも自身で発明したちょっとおかしな独自の技法によって作られていること。そしてもう一つこだわっている点は、これらが一回限りの一点性のプリント作品だということ。むろん写真の写真性とは複製にあるわけだが、ここでは制作方法によってそれを敢えて壊している。

新作の『Darkside of the Moon』。テキストをいくら書いても説明は難しい。むしろ作品自身をテキストとして読んでいただきたい。今まで私の作品について何度も「反写真行為」といった言葉が発せられてきたが、この新作はその中でも最もアンチ写真となる作品だろう。キャンバスにコラージュされた、これも完全な1点限りの作品。三点セットの連作、その三点の写真には終わりがない。それぞれのイメージの関係が循環し輪となり永遠に繰り返される。イメージという存在を否定するかようなフィジカルな行為「ドリッピング」がその繋ぎを強固にする。コラージュされた写真同士の相反する「切断と溶解」、この繰り返しによって我々には日常まったく見えてこない視覚と認識の裏側を見せられるような、目眩を起すような効果がありそうだ。そう、例えば我々の目からは見えない『月の裏側』を見るような、知っていても見えない存在とも言えるのだ。 (Yuki Onodera, Paris, July 2, 2020)

 
Darkside of the Moon, Muybridge’s Twist, 11番目の指, 決定的瞬間のための習作

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Paris