ツァイト・フォト・サロン, 東京

個展, 2015/10/7-11/10

“Muybridge’s Twist”

オノデラユキの発想力と作品の構築力にはいつも驚かされる。今回ツァイト・フォト・サロンで展示された「Muybridge’s Twist」は、今年4月~6月のパリ・ヨーロッパ写真美術館(MEP)での個展で、最初に発表されたシリーズだが、まずそのスケールに度肝を抜かれる。最大で304×210センチの大きさで、やや天井が低い今回の会場の壁にはおさまりきれず、上下にはみ出しているものもある。
内容的にもかなりトリッキーで、複数の写真図版(モード、建築、オブジェ等)を複写して大きく引き伸し、それらを自在に切断/コラージュしてキャンバス地に水性の糊で貼り付けてあるのだ。「Muybridge’s Twist」というのは、いうまでもなく、19世紀に運動している動物や人間を連続的に連続撮影して、「動き」の瞬間のフォルムを定着しようとしたエドワード・マイブリッジにちなんだタイトルである。オノデラはマイブリッジの手法を逆転させて、動かない写真に「動き」を与えようともくろむ。
その「コレオグラフィ」的な操作はかなり成功していて、奇妙に歪んだり捩じれたりした、リアルな夢のようなイメージが出現していた。写真と写真のつなぎ目に、切り取りの「当たり」の線をわざと残したり、地の部分に木炭で薄く影を入れたりする、細やかな配慮もうまく効いていたのではないかと思う。
会場にはもう一つ、2本のペットボトルを、「不意打ち」のようにあり得ない形に接続して撮影したシリーズも並んでいた。こちらは「Study for “Image la sauvette”」というタイトルが示すように、アンリ・カルティエ=ブレッソンへのオマージュだという( “Image la sauvette”は『決定的瞬間』の仏語版のタイトル)。写真史を渉猟しつつ、新たなイメージを創出していくオノデラの試みは、さらにスリリングなものになりつつある。
飯沢耕太郎 artscapeレビューより 2015/10/08

 
Muybridge’s Twist, 決定的瞬間のための習作, ACT

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Paris