12 Speed

2008, ピグメント・プリント, バライタ紙, 全24点 (カラー、モノクロ 各12点)

濃いピンク色の壁面と同色のテーブルの上に、ヘッドホンやスナック菓子の袋、コップの牛乳やビーズで編んだ犬の人形など、若い女性の部屋を想起させるポップな小物が並ぶ。キッチュな要素で構成されているにもかかわらず、古典的な静物画を彷彿とさせるこのセットは、フォンテンブローの森の中心に設置された。それを示すのは、中央に置かれた鏡に写り込む森の木々だけである。同じセットで鏡の向きを少しずつ変えながら連続撮影された12点の違いは、鏡の角度によってわずかに変化する「森の風景」のみである。一見同じ写真の繰り返しに見えるが、鏡はレーダーのように角度を変えながら、周囲の状況を伝えるシークエンスを形成する。撮影する側、撮影される側すべてが写し込まれた360度写真。壁面に描かれた落書きのような矢印と暗号めいた文字は「永劫」を意味し、同じ瞬間が、無限の時間軸のなかで何度も繰り返される、ニーチェの思想「永劫回帰」を連想させる。

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Paris