オノデラユキ 写真の迷宮へ
─創造する写真20年の軌跡─
岡部友子, 前田恭二, フランソワ・シュヴァル
窓辺に立つ身体のない古着。ファッションモデルのような女性のシルエットの内部には、夜の街頭や歴史遺産などの風景が隠されている。群衆の頭上には白い光の玉が浮かび、古典的な静物画を装ってビーズ製の犬の人形やジャンク・フードの袋が並ぶ。
オノデラユキの作品は、「写真」という一般的概念に収まりきらないところにその魅力と特質がある。あるときはカメラに細工を施し、またあるときはコンピュータを使い、モンタージュやコラージュなどの技法を用いながら、日常の風景や事物を、私たちの想像を超えた視覚世界に作り変える。オノデラユキの作品を通覧してみると、そこにはイメージの玉手箱を開けたように、さまざまな写真表現がちりばめられていることに気づく。どれも手の込んだトリックが仕組まれ、イリュージョンのように私たちを幻惑するのだ。次はどんな仕掛けが隠されているのか、オノデラユキの作品には、ついそんなことを期待してしまう面白さがある。しかしその一方で、写真そのものに対する批評的態度が根底に貫かれている。本稿では、パリを拠点とし国際的なスケールで、新たな写真表現に挑み続けるオノデラユキの20年の軌跡をたどりながら、その創造の秘密に迫りたい。
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